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tranSMS 活動報告書 2013

tranSMS

-世界の物流ハンディキャップを解消します

はじめに

 

私たちtranSMSは、発展途上国において「物の流れ」を効率化することで、人々の暮らしを豊かにすることを目的に活動しているプロボノチームです。2012年に開催された、発展途上国のためのプロダクトデザイン&ビジネスコンテスト"See-D Contest"をきっかけに生まれました。

 

チームはエンジニアや作家、マーケター、会計士に学生と、多彩なメンバーで構成されています。余暇時間を使って「世界を変える」ための活動を楽しみながら行っています。

 

私たちはSee-D Contest2012で[最優秀賞]という期待をもらい、また、クラウドファウンディングサービス"READYFOR?"を通じて、107名の方から活動資金を頂くことができました。そこで、現在、東南アジアの島国、"東ティモール"を舞台に、スマートフォンのアプリを活用した物流改善のためのプロジェクトを進めています。左の写真はチームのメンバーと東ティモールのパートナー達の写真をちりばめました。

東ティモールについて

 

[概要]

・正式名称 : 東ティモール民主共和国

・公用語 : テトゥン語、ポルトガル語

・人口 : 約118万人 (2011年)

・首都 : ディリ

・面積 : 15,007平方km (岩手県と同程度)

・GDP : 43億ドル

・生活費 1日2ドル未満のBOP層 : 77万人

・使用通貨 : 米ドル

・宗教 : キリスト教99% (大半がカトリック)

 

[地理]

東ティモールは、日本の約5,000km 南に位置する島国です。日本との時差はありません。インドネシアの小スンダ列島にあるティモール島の東半分とアタウロ島、ジャコ島、そして飛び地のオエクシをその領土としています。南方には、ティモール海をはさんでオーストラリアがあります。国土の6割が山岳地帯であり、3,000m近い山々がそびえています。

 

[歴史]

東ティモールに人間がやってきたのは古く、紀元前2000年とも3000年とも言われています。16世紀になると、ポルトガルによって植民地化されました。また、第二次世界大戦時には、日本軍に占領統治されたことがあります。1975年に東ティモールは独立を主張しますが、インドネシア軍によって占領されてしまいます。長い闘争の末、独立を得たのが2002年の事でした。このおよそ30年の間に国民の3割が虐殺されたと言われています。独立後も混乱が続きましたが、やがて収束し、2012年には国連の治安維持活動も終了しました。

[産業]

農業が主要な産業で、米やトウモロコシ、イモ類、ココナッツなどを栽培しています。ただし、その多くは零細農家で、流通が不十分なこともあり、インドネシアから米や鶏肉、卵といった食料品を大量に輸入しているのが現状です。東ティモールの商品作物としては、コーヒー豆やパームオイルなどがあります。

 

また、ティモール海には海底油田があり、石油・天然ガスが国家財源として大きな役割を占めています。しかし、その生産ピークは過ぎており、2025年には枯渇すると言われています。主要産業の育成が急務です。

 

[文化]

東ティモールの人々は自然を敬い、自然に守られて暮らしてきました。彼らは、万物に宿る神聖な力を[ルリック]と呼んでいます。特にワニは神聖な生物です。創世神話でも、ワニがティモールの大地になったと語られています。東ティモールの人々のほとんどはキリスト教(カトリック)を進行していますが、一方でこうした伝統的な価値観も根強く残っています。

 

また、東ティモールには[タイス]と呼ばれる伝統的な手織物があります。その模様は家ごと、地域ごとに特徴があり、女性の仕事としてその家で代々受け継がれています。もっとも優れた職人によるタイスは、ヨーロッパ企業が費用を惜しまず買い付けているそうです。

 

tranSMSのしくみ

 

[着目した課題]

東ティモールは輸送システムが未発達のため、モノを運ぶための手段が限られています。地方に住む農民が街の市場へ生産物を運ぶには、手持ちで運ぶかトラックをチャーターするしかありません。トラックを借りるには、1日350ドルの費用がかかります。彼らの平均世帯収入は50ドル以下です。これでは、大型家畜 (牛や豚など)を育てたり、コーヒー豆や米を大量に収穫できたとしても、市場へ運び、販売する事が困難です。こうした状況が、地方産業発展の妨げとなっていました。

 

[解決案]

街から村野キオスク (商店)へ日用品を配送しているトラックは、しばしば荷台をからにして帰ってきています。私たちはその[帰り道]を利用できないかと考えました。運送事業者と農業従事者・キオスクオーナーのネットワークを構築し、配送・集荷情報を集約管理できるようになれば、帰り便で、地方の生産物を街へ輸送する事ができるようになります。

 

 

[具体的な仕組み]

"SMS一斉送信"機能を持ったアプリを開発し、スマートフォンとともに現地の運送事業者に提供します。このアプリがあれば、トラックドライバーは帰り道にスマホの画面を3回タッチするだけで、近くに住む農家に[運んで欲しい荷物はありませんか?]というメッセージを送る事が出来るようになります。

 

アプリには事前に農家の電話番号を登録しておきます。村別に登録出来るので、配送ルートによってメッセージを振り分けることができます。現地にインターネット環境はほとんどありませんが、4割の世帯が、最低5ドルで手に入る携帯電話を所有しています。SMSなら電話回線でメッセージを送る事が出来るのです。

 

農家は、トラックドライバーから送られてきたSMSに返信するだけで、わざわざチャーターするよりも、ずっと安い価格で大型の農畜産物を運ぶことが可能になります。運送事業者もまた、荷物の集荷としう仕事が増え、収入増につながります。

ファーストトライアル

 

私たちは2013年の4月25日から5月2日にかけて東ティモールに渡航し、南部のマヌファフヒ県において、トラックを所有する議場者へのシステム導入を行いました。まずはNGO FutureDiackの代表、モウジーニョさんと、現地のキオスクおよびコーヒー農園の経営者であるジョアキムさんを現地パートナーとして、traSMSの考案した仕組みを活用してもらいます。深夜までアプリの使い方を説明した結果、彼ら自身が他の人に使い方を教える事ができるようになりました。

 

モウジーニョさんは100名ほどの農家を束ねているリーダーです。彼は既に、農作物を集約して街に運び、街で商品をまとめ買いをして運んで帰るという効率的な運送をしていました。ただし、その連絡方法は[1人ずつに電話をかける]というものでした。私たちのアプリを使えば、その効率は飛躍的に高まります (なにしろみんな長電話をしますから... )

彼のネットワークが広まる事は、市場にアクセスできる農家が増えるということでもあり、地方経済の活性化に繋がります。

 

 

ジョアキムさんは4人の仲間とともに、地元の農家を回り、牛や豚を購入して市場へ運ぶ、という仲介業も営んでいます。ただし、その手段は[脚で稼ぐ]というものでした。tranSMSのアプリを使えば、一度会った農家には定期的にメッセージを送るだけで、生育状況の確認ができます。農家側はこれまで、たとえ売りたくても彼らが来るのをずっと待つしかありませんでした。これからは出会える可能性がぐっと高まります。

 

私たちはこうしたパートナーからのフィードバックを受け、システムを改善していきます。このモデルを他県へと拡げていき、最終的には東ティモール全土の物流改善を目指します。

 

そのために、今回の渡航で、国会の副議長であるアデリードさんや、ティモール大学教授のマーフィンさんともお会いし、強い関心を持ってもらうことができました。また、日本大使館やNGOの方々と面会する機会もありました。tranSMSの活動も、日本と東ティモールとの良い関係作りに繋がればと思います。

今後のtranSMS

 

右の写真は、私たちが滞在を終えた後に、カウンターパートナーの1人であるモウジーニョさんが、サメ、アイレウ、スアイという各地域で、tranSMSのシステム説明会を開催した様子です。

 

少しずつですが、彼ら自身の手による物流の効率化が進み始めています。

 

私たちもまた、2012年10月から、今度は長期滞在できるスタッフが東ティモールに行き、現地での取り組みが加速するようチャレンジしていきます。今後ともtranSMSをよろしくお願い致します。

 

 

 

tranSMS

-世界の物流ハンディキャップを解消します

 

 

 

[tranSMSのメンバー]

瀬戸 義章 / Seto Yoshiaki (代表)

神川 康久 / Kamikawa Yashisa

門田 (伊藤) 知子 / Kadota-Ito Tomoko

後藤 良典 / Goto Yoshinori

小林 健作 / Kobayashi Kensaku

三浦 悠樹 / Miura Yuki

宮本 嘉行 / Miyamoto Yoshiyuki

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